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想う生き物

様々なものを「想う」毎日を「明るく・楽しく・いやらしく」ワキャキャと書いていきたいです。

2013-02

闇の話 「更なる別れ」

ダイが帰ってしまって少しして、更なる別れがやってきた。

1つは働いていた新聞店の奥さんとの別れ。

近くにある販売店に吸収される形になり、店長家族は県外の他のお店に行く事になってしまったという話を聞いて何日もしないうちに夜逃げ同然で家族が姿を消してしまった。

後後になってお金の管理面がずさんでお店を取られたという話を聞いた

華はしばらく集金の仕事を続けていたのだけど、前と比べて大幅にお給料が落ちたので他の仕事を探しつつ徐々に地区を減らして最終的にはお店を辞めた。


そしてもう1つの別れは店長。

それについては前々から「仕事を辞めて家の農業を継ぐ」という話を聞いていたからさほどショックではなかったけれど
毎月返済に行く時の「楽しみ」と言っては変だけど、そんな気持ちがなくなるのは淋しいなと思っていた。


ある日、店長から電話をもらっていつものように食事へ行った時、「近いうち」と言っていた話の日が決まったことを聞かされた。
「そうですか。店長と農業って結びつかないですね」
そんな風におどけていたらテーブルの上に厚みのある封筒が置かれ、華の方へズイと押された
「なんですか?」
「俺に用立て出来るのはこれだけだ、だから残りは別でキャッシングを受けて、とりあえずあの店の借金を完済しろ。」
中身を見なくてもその厚みが10万や20万でない事くらいは分かる。
何て言っていいか分からなくて、両手でその封筒を押し戻してブンブンと大きく首を横に振る

「大丈夫ですから、店長が変わってしまっても、ちゃんと返しますから」
「お前が返さなくなるなんて言ってない、いいから俺の言うとおりにしろ」
「大丈夫です」
「黙って俺の言うとおりしろ。」
いつもの優しい声ではなく少し怒っているような声にビクっとしてそのまま下を向くと、少しの沈黙を破って店長が立ち上がった。

約1時間後、華は店長のお店の借金を完済した。
「もう借りに来るなよ~」そんな言葉に見送られお店を出て少し歩いて再び店長の車に向かう

当たり前だけど、身軽になった感はない。
結局、半分は店長が、残りは3枚のキャッシング返済カードとなって華の財布にある。

店長の車に戻る気持が重いのは、自分が騙されたんじゃないかとか実は更に借金をしてしまったんじゃないかとかそういう気持ちではない。

「店長、返済方法を決めて下さい」
車に乗り込むなり切り出した言葉に店長は呆れたように笑った。

「お前な~、少しは力を抜けよ いくらかは借金減ったんだぞ?飯でも行くか」
「店長!ちゃんと話を聞いて下さい!」
「分かった分かった、まずは消費者金融の金を返せ 今までみたいにガツガツ返さなくていいから、貯金したり、少しは遊んだりしながら着実に返せ。
それが終わって、俺の事を覚えてたらでいい」
「そんなのダメです!振込先を教えてください!」

何度はぐらかしても折れない華に最後は店長が折れて、メモ帳に振込口座を書いてくれた

「いいな、絶対に無理して返そうとするなよ」
「はい。ありがとうございます。」
「お前は嫌な物を見過ぎてる。もっと若い子らしい楽しみを見つけろ」
「はい」
「よし、メシメシ!」

そう言って車を出そうとする店長をじっと見たままいる華

「何喰いたい?」

「店長とデートがしたいです。」

ほんの少し進んだ車がキツめのブレーキで止まり、店長がビックリしたような顔をして華を見た

闇の話 「1ヶ月」

「へ?」
店長の言葉に華はおかしな声をあげてしまった。

そこで初めて華は店長がバツイチであることや、思っていたより年上だったこと
そして華とダイの事をそこまで考えていてくれた事を知る

「別に今すぐ返事をしろとは言わない。 だけど1人で親になる事は想像以上に大変な事だぞ」
そう言ってコーヒーを飲む姿が急に「異性」としてうつってドキドキした。

内容にはあまり関係ないけれど、当時の華は最悪のファーストキス以来、異性を何となくコワいと思っていたし
彼氏を作るなんて考えるような生活をしていなかったから当然(?)処女だった。

店長も華をそういう目で見ているような素振りをしたことがなかったから全く予想していない言葉だったけれど、なんとなくダイがいて店長がいる生活なんかが頭に急に思い浮かんで真っ直ぐ顔を見れずにいた。


そして約束の1ヶ月が過ぎて、今度はすんなりと連絡が取れて再びクーの実家へ出向く。

「どうぞ」

相変わらず何となく薄暗いリビングに華はちょっとホッとした。
そこに「子供のいる生活」みたいな何かが用意されていたりしたら、と思っていたから

「1ヶ月、良く考えてみましたが、やはりその子に対して愛情がわいてきません。」

華はその言葉がダイの耳に届いてしまわないようにやんわりと抱き締め「そうですか」と返事をしてから養子にしたい事を切り出した。

「何か私達にすることがあればさせてもらいます」
良いも悪いもないそれだけのクーの父親の返事に黙っていた店長が口を開く

「ダイ君がこの子の養子になったら、私はダイの父親になりたいと思っています。
その際は貴方方や娘さんにどのような心境の変化があっても、どんな理由があっても、会わせるつもりは一切ありません。
そして今後、何かの拍子にあなたの娘さんがまたこの子やダイを傷付けることがあったら、絶対に許さない。
その時、自分が何をするか分かりません。」

「わかっています」

下を向いたままのクーの父親を見て、華は早々に立ち上がりダイの手を引く

「ダイ、おじさんとおねえちゃんに「バイバイ」しような」
店長がそう言ってダイが小さな手を前に出し「ババーイ」と言った時、それまでずっと黙りこんでいたクーの妹さんが口を開いた

「ダイじゃない」
「え?」
「その子の名前はダイじゃなくて、だいき 大きな希望で大希。」
「お前、知ってたのか?」
父親が顔を上げてそう言うのと同時に妹が差し出した封筒には見覚えのあるクーの字で子供が生まれたこと、名前が大希なこと、今は戻れないけれどいつか必ず会いに戻ると書かれていて
最後に会った時より随分と化粧っ気のないクーが小さなダイを抱いている写真が同封されていた。

「お父さん、大希は私がお姉ちゃんの代わりに育てていく。このままじゃ大希が可哀想だよ
お姉ちゃんが戻って来れなくなっちゃうよ
華さん、私が華さんの分も大希に愛情を注ぐと約束をするから、大希を養子にする話はなかった事にして下さい」

そう言って戸惑い顔のダイを抱き寄せ「お父さん」と小さな声で呼んでから「大希、おじいちゃんだよ」と父親にダイを抱かせた

「大希・・・・・」
父親はそう言ってダイを抱きしめ、華に向かって「申し訳ありません 孫が大変お世話になりました」と頭を下げた。

あまりにもな展開にポカンとしたままの華を無理に引っ張るようにして「では、荷物はこちらに送るようにします」と店長がリビングを出ようとする

「やだ・・・・・そんなのやだ」
「華!」
「やだやだやだ!そんなの納得いかない!」
「ダイが辛くなるんだぞ」
「やだ!ダイ!」
その言葉とほぼ同時に父親に抱かれていたダイがワーと大声で泣き出した

「はなー!はなー!」
大暴れして父親の腕から逃げようとするダイ

「ダイ!」
ダイのもとへ駆け寄ろうとする華をほとんど担ぐようにして店長がリビングから玄関、車まで一気に進む

家の中からはダイの悲鳴に近い泣き声と華を呼ぶ声が聞こえる
「はなー!はなー!はなー!」


「やだ!やだ!ダイが呼んでる!ダイを連れて帰る!」
夢中で車を降りようとする華の顔をシートに押し付けるようにして、店長が車を出した

「ダイ!ダイ!」
「ひどい!店長があんな事を言うから!」
「ダイを連れ戻しに行かなくちゃ!ダイが泣いてた!」

何を言っても店長の力は緩まない
暴れて暴れて泣いて泣いてグッタリした所でやっと車が止まり、店長の手が頭から離れる。

「ひどいよ・・・・・ひどいよ店長・・・・・・」
「痛かったな・・・・・ごめんな」
今度は撫でようとする手を払いのけて「店長のせいだ!」と怒鳴る華を店長が抱き締めた

「お前が親になってもダイは幸せになっただろうけど、ダイに帰る場所があるなら、それを取り上げる事は出来ないんだ」
「あーーーーーーーーーーーーーーーー」

分かってる、そんな事は分かってる
ダイにとって一番幸せなのは、きっとそういう事なんだろうって分かってる
ダイだけじゃなく、クーの父親だって妹だって、何かの拠り所が必要なんだって分かってる

だけど華にとってダイとの生活は幸せしかなかった

もしかしたら、この先、問題ばかり抱えて後悔の生活しかなかったとしても、ダイの為なら頑張れる気がしていた。

華にとってダイは光だった
抱いた時のダイの重さは幸せの中で生きている証拠の重さだった

そんな全ての感情を吐き出すように華は店長の胸に大声を叩き付けるようにして泣いた

どのくらいかそうしていて、店長と二人で華のアパートへ行き、段ボールにダイの服やオモチャを詰めた
「結構あるもんだな」
狭い玄関に大きめの段ボールを2つ積み重ねて、帰ろうとする店長のスーツの裾を掴んで帰らないで欲しいと言った

ガランとしてしまったアパートに1人でいるのは辛かったし、その時はまだ1人になったらクーの実家へ押し掛けてしまいそうな気がしていた

「分かった」

そう言って店長は食事とお酒を買ってきてくれて、特に何を話す訳ではなく一緒に夜を過ごした

ベッドに入ると異様に甘えん坊になった華は店長に絡みつくようにべったりくっついて眠った

今となれば分かるのだけど、店長はそれに反応を示していた(当たってたからね)
だけど華に対して何もすることはなく、目覚めると段ボールと一緒に居なくなっていた。


あの日から華はダイに会っていない。
その数年後、クーの妹がバツイチの男性と結婚したという話を聞いた。
男性の連れ子さん2人の間にダイという年齢の並びで、付き合っているときから男性が3人の子供を同じように褒めて同じように叱る所に惹かれたんだと言っていた

最後に話を聞いたのは「ダイの記憶の話」

偶然にも華と店長が連れていった小さな遊園地の傍の高校へ通う事になったダイが突然「俺、あの遊園地に行ったことあるよね?」と言ったんだそう
妹さんは連れていったことがないから華が連れていったんだなと思って話を合わせていたら「細かい事はよく覚えてないけど、すごく楽しかった事はよく覚えてる。俺も子供が出来たら連れていきたいな」と笑ったんだって


残念ながら華は最後のダイの悲鳴のような泣き声が一番心に残ってしまっている。
だから未だに子供さんの「ぎゃー」というような泣き声はちょっぴり悲しくなってしまう。

母は「実の母親と離れる時はケロリとしてたんだよ 華はちゃんとダイを愛してたんだって自慢して良いよ」と言う。

今はどうしているか分からないけれど、華はダイが幸せでいてくれたらそれでいいと思っている
もうそう願う事しかダイにしてあげられることはないけれど



話は戻して、ダイのいなくなった生活は本当に淋しかった。
奥さんの子供達に「今日はダイ来ないの?」と聞かれるたびに、胸がチクチクした。
「ご飯行く?」そう誘ってくれる奥さんにも、首を横に振り「お米を取りにおいで」と連絡をくれる母にも「あとで」と返事して
返済に行った時、店長と目を合わせる事もしないままだった

お金を稼いで借金を減らすだけの為に生きている毎日に戻った華に、更に追い討ちをかける別れが待っていた。

華が華でいること(覚悟しておいての続き)

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「覚悟しておいて」の件

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迷子!

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今日という一日

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出張~ぅ。

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闇の話 「闇の中の光」

華がダイの行動で一番印象に残っているのは、華が目が覚めた時に玄関掃き用のホウキとチリトリを持って立っていた姿だ。

何が何だか分からない華をよそにダイはそのホウキでおそらく掃除をしていたんだと思う。
その時の何とも大真面目な表情と「しゅっしゅ~ しゅっしゅ~」という掛け声が物凄く微笑ましくて玄関用の汚い物だと教えるのを忘れるほどだった



1週間が過ぎて母も奥さんも店長も、もちろん華もクーの実家へ連絡すべきだと言っていた。

だけど何度電話をしても電話に出ないし留守電を残しても返事がない事に華だけはホッとしていた。

おそらく母も奥さんも店長も華に情が湧いてしまっている事も気が付いていただろう
だからこそ「連絡した?」「キチンとメッセージ残したの?」と言われることが華は苦しくなっていった。

ずっと一緒に居られる訳はないって分かっていたけど

連絡が取れない間、ダイのオムツ離れに成功した。

「はなぁ、ちー」
その言葉を聞いた時、実際に出たのをw確認した時の感動と言ったらなかった。

そして嬉しさのあまり頭を撫でようと手を上げると、ダイがビクっと身体を固くするのが胸を締めつけられる思いがした。


ダイはどんどん大きくなって、どんどん良い子になった。
ここで言う良い子は表情豊かで明るくて優しい子という意味で


連絡のない安堵の日々も2週間、3週間、1ヶ月となると周りは華とダイの切り離しにかかる。
周りが「早くしないと」と思うほど華とダイの結び付きは強かったんだと思う。


そして痺れを切らした店長がクーの実家に連絡を強行し、とある日曜日にダイを連れて話に行く事になった。

「どうぞ」

出迎えてくれたクーの父親も最後に見た時より随分と老けこんでいたし、リビングで父親の隣に座ったクーの妹はすっかり大きくなっていた。

電話である程度伝えてあったから結論を聞くだけだったのだけど、たびたびダイが「はなぁ」と呼んだり「にゃーにゃ」とテレビの中の猫を嬉しそうに指差したりするから切り出しに困っていたら父親がダイをチラリと見て口を開いた

「ご存知の通り、我が家はアイツに滅茶苦茶にされた。だからもううちの娘だと思っていない。
うちの長女はとっくの昔に死んだと思っています。
だから申し訳ないけれど、その子を見ても何の気持ちも湧いてきません。

華ちゃんがその子をどうしようとうちには関係ありません。
施設に入れるなり、お好きなようにしてください。」


「そうですか・・・・・」

華は正直、物凄くホッとしていたけど店長が横から「あなたのお孫さんですよ」と苛立ちを見せ、ずっと下を向いていたクーの妹さんが顔を上げた

「華さん、私も父も突然の事過ぎて混乱しています。
姉がどこで何をしているか、生きているか分からない状態で子供と言われてパニックになっています。

ワガママを承知で言わせて頂きますが、あと少し、父とよく話し合いますから、その子を預かっていてもらえませんか?」

「分かりました。あと1ヶ月預かります。」
華がそう答えた時、店長は「長いな」みたいな顔をしてこっちを見たけど華はそれを知らん顔してそそくさに帰り支度をする

「では、1ヶ月後にまた連絡します」
そう言って玄関を出かけた華を父親が呼びとめる

「娘の小さい頃にそっくりだ、これで暖かい服でも買ってやってください」

そう言って一万円札を3枚、華に握らせて深く頭を下げた。



1ヶ月はあっという間だった。

期限のあるダイとの生活を華は楽しい事をふんだんにもりこんで過ごした。
ダイを連れて小さな遊園地へ行った時、初めてスーツ姿以外の店長を見た。
いつも決め込んで固めている髪もナチュラルになっていて笑いをこらえるのに苦労した。


華の中である心境の変化があって、それに対する反応は様々だったけれど誰もが予想していた事のようだった。

もし、ダイを引き取らないとクーの家族が言ったら、自分の養子にしたいと華は思っていた。
たかだか2ヶ月の生活で、と思うだろうけど、その時の華は真剣にそう考えていた。

「ダイを養子にしたい」そう華が言った時の母の言葉はこうだった

「お母さんは華を生む時、普通分娩で何時間苦しんでも産まれてこなくて「このままじゃ危ない」って事で、華を一度お腹に戻して帝王切開してやっと産んだの。
正直、もう二度とこんな思いはしたくない!って思ってね
でも、華の顔を見た瞬間に、痛みとか疲れとかそんな思いが一瞬で全部愛情に変わったみたいになってね
あんな痛みを感じて産んだ子のことなら、どんな事でも出来るって思ったよ

華が今、ダイを思ってるのは良く分かるよ。
お母さんだってあんな良い子が施設で暮らすなんて可哀想だと思うよ

でもね?華はこの先、自分が子供を産む可能性があるの
自分のお腹の中で育てて、苦しい思いをして産む子供とダイをどんな時でも同じように愛せると思える?」

奥さんもほぼ同じ事を言ってなおかつ「もしダイの事が恋愛や結婚の障害になってもダイを責めずにいられるか」と付け加えた。

その時の華なりに色々な事を考えたけれど、どうしても華はダイと離れたくないと感じていた。

きっと華はダイに依存していたんだろうと思う。

最後に店長に相談した時の店長の言葉は更に重かった。

「成長するに従ってダイの顔がクーに似てきたり、性格が似てきたりした時に憎しみの対象にならないか?
それにダイを養子にするという事は、クーとの繋がりが切れないってことだぞ?」

どこまでいってもダイはクーが産んだ子供。

「そうだとしてもダイには何の罪もない。」

華の返事に店長は「そうか」と言って、数秒後に意を決したようにこう言った


「俺がお前と一緒にダイの親になってやる。」

闇の話 「ダイ」

実家へ戻ると母が小さな子供を抱っこして、というより、小さな子供が母の首にしがみつくようにしてこちらを見ていた。

第一印象は「小さな子だな」ということだった。


母が言うには母が仕事を終えて家に帰ってきたらクーが外で待っていて「1週間ほど仕事で遠出するので子供を預かって欲しいと華に頼んである。華が実家へ迎えに行くから『置いておいて』と言った。」と有無を言わせぬ勢いで子供と小さなバックを玄関に置いたらしい。

「華に確認するからお茶でも飲んで待っていて」
さすがにおかしいと感じた母がそう言うと、クーは「いいです!じゃ!ダイ!バイバイ!」とそそくさに車に乗り込んで行ってしまったそう

そんな話は聞いていない、という華の言葉に母は「やっぱり・・・・・」みたいな反応をした

今みたいに携帯が当たり前な持ち物でなかったから母と2人で「さぁ、どうしよう」みたいな空気になった。

「名前はダイくんで3歳って事しか分からないのよね・・・・・」
何か分からないものかとクーが持ってきた小さなバックを開けてみると、それは「お泊り用」に用意された感じではなく寒い時期なのに甚平のような上下が1枚と食べかけのお菓子の袋と紙オムツが3枚入っているだけだった。

「なんだかクーちゃん、随分変わってたわよ」

何も知らない母は昔のふっくらしたイメージと様変わりしたクーを心配していた。
自分の子供を預けるのに「置いて」と表現した事も、別れ際も「バイバイ!」とあっさり行ってしまった事も

そしてダイがそれを淋しがって泣いたりする事も一切なかった事も

「とりあえず1週間、連絡を待つよ。もし何か連絡あったらこっちの電話番号を教えてやって。
連絡がなかったらその時は実家へ連絡してみる。」

「そうだね、気が変わってすぐに戻るかも知れないしね」

それから華は母に簡単なレクチャーを受け(特にオムツ替え)自宅へ戻った。

ダイは一切喋らないし、笑わなかった。

母が持たせてくれた子供でも食べられる薄味の食事もプイと顔を背けて食べようとしない。

そしてその日の夜はほとんど眠らなかった。

知らない場所へ来て緊張しているのかなと思い、翌朝、新聞店に連れていき事情を説明して集金に連れていきたいと話すと奥さんは「ウチは子供がたくさんいるし、3歳なら一番下と同じだから一緒に遊ばせておいたらいいよ^^」と言ってくれた。
「ありがとうございます、助かります」と恐縮する華に「その代わり、悪い事をしたらウチの子と同じように叱るよ?いい?」と豪快な笑顔をみせた


集金を終えて夕方お店に戻ると、その笑顔は消えて「華、ちょっと話せるかな?」と事務所の奥に呼ばれた。

奥さんの話はこう

①全ての子供がそうだとは言えないけれど、言葉が全く出てこない様子
②同じく年齢で括る訳じゃないけれど、オムツもちょっと長い(?)
③普通の食事を一切せず、お菓子ばかり食べる もしかしたらお菓子を主食としてたかも知れない(ウンチもおしっこも甘ったるい匂いがする)

「ここまでは自分の子育て経験上の話だから、あまり気にしなくても良いかも知れないけど」
と言って更に渋い表情で続ける

④大人しくしているのだけど(大人し過ぎるくらい)突然感情的になって物を投げたり叩いたりする。
⑤それを叱ったら叱られた事にじゃなくて大きな声に反応して激しく泣いた。
⑥申し訳ないけどあまりキレイではなかったのでお風呂に入れたら背中に結構な数のアザや傷があった。

「もしかしたら虐待を受けてるか育児を放棄されてたかも 早いうちにその友達の親に連絡するなりした方がいいかも」

「え?」

「友達、戻ってこないかもしれないよ」

最悪の事態としてそれもなくはなかったけれど、ハッキリ言われるとやはりショックだった。

「ウチはね、1人増えても変わらないから昼間見るのは全然構わないけどね」

「とりあえず、1週間は待ちます」

そう言って自宅へ戻る途中、自分が物凄く軽はずみにダイを連れてきてしまった事を反省した。
ただ食事を食べさせたりオムツを替えたりしてあげさえすれば、1週間なんてあっという間だと思っていた。


たくさんの友人の人生を狂わせ、ポコちゃんをあそこまで追い詰め、華を未だに苦しめているクーの子供

だけど、繋いだ小さな手や見上げてくる瞳に何の罪もない。

そこで初めてマジマジとダイを見つめた気がして、自分が大人の歩幅のまま歩いていて、ダイがピョコピョコと小走りになってしまっている事に気がついた

ダイにとって意味のある1週間にしよう。

「ダーイ?」
小さくした歩幅と遅くした速度の先で瞳だけがこちらを見上げる
「はーい!って言うんだよ」
公園のベンチに座らせ、自分は目線が同じになる位屈んで「はーい」と元気に手を上げて見せる

ダイはキョトンとした顔でこちらをみているだけ

「はな、私ははなだよ」自分を指差してゆっくり「は な」と何度か言って「はなー?」と呼んでから「はーい!」と手を上げるのを何度かやって見せる

ダイは笑う訳でもないし、一緒に声を出す訳でもないけど、興味はありそうにこちらを見ているから今度は「ダーイ?」と呼んで「はーい」を待つ

「そう簡単にはいかないか^^;」


それから華は、なるべくダイとの時間を明るく使う事にした。(昼間奥さんが見ていてくれたのが本当に助かった)

どれもこれも大変な事だったけど、印象に残っているのは食事。

最初はオムライスやスパゲティ(お子様ランチを思い出して)など色味が明るいものを騙し騙し食べさせようとした
「えー?ダイ食べないのー?美味しいのになー」
家でもスーパーでも帰り道でも1人で楽しげに話すのが普通になっていたから、その辺に躊躇はない

「じゃあ、華が食べちゃおうかな^^ あー、美味しい♪」

しーん。

「もっと食べちゃおうかなー^^ あーん^□^ あ~、美味しいなぁ」

気が遠くなるほど繰り返して、最終的には「これを食べたら、これを食べても良い」的にゼリーをちらつかせて(きっと良くないよね^^;)オムライスを口に入れた時にダイの顔はひどいもので「べー」とボロボロ口から出す姿も何度も見た。

結局根負けしてお菓子をあげてしまう自分が情けなかった。

「どう?大丈夫?今日お休みだから見ようか?」と母が助け船を出してくれたり、奥さんがあれこれ世話をやいて(服をくれたり)くれたりしていたから出来た事で、華1人だったら絶対に無理だったと思う。

母も奥さんもダイが悪い事をしたらきちんと叱った。
そして泣くダイを膝に置いて何がどうダメだったから叱ったのかをきちんと説明した。
ダイが泣いて泣いておそらく聞いていないだろうなと華は思ったけど、2人は毎回そうした

だけど華はダイが泣くのがコワかったから叱る事をしなかった。

その辺が実際に子育てをした親と、そうじゃない華の違いなんだろうなと思った。


「しかし・・・・・お前のお人好しには呆れるな お前、人間じゃなくて神じゃない?」
子連れの華を見て店長が呆れた顔をして出しかけたタバコを箱に戻した。

「きっと貧乏神ですね^^;」

昼間のファミレスで久しぶりに店長と会う

「ダイ」
会話に気を取られてダイがお子様ランチをグチャグチャにしていた事に華は気がつかなかったけど、目の前に居た店長は気がついていたようで長い手を伸ばしてダイを抱き寄せた

「全然食べないんですよ・・・・・」
店長のコワモテにダイが泣くんじゃないかとか、店長が怒鳴るんじゃないかと慌ててフォローする華をスルーして店長はダイを膝の上に乗せてお子様ランチを指差す。

「食べ物をオモチャにしちゃダメだぞ 食べないなら俺が食べてしまうけどいいか?」
そう言って、華が何度もやって失敗した「あー美味しい」作戦をしてみせる

やっぱり大きな反応なく視線をやるだけのダイにとった次の行動は華と違っていた

華はその後「はい」とダイの口に運んでイヤイヤ口を開けるのを待ったけど、店長は「美味しいぞー、ダイも食べるか?」と聞いた
聞いても返事はしないのだけどそのワンクッションをしてから食べ物を口の傍に持っていくと、なんとダイは普通に「あーん」と口を開けて出す事もなく食べたのだ

「うまいかー?うまいだろー?もっと喰うかー?」
何度もそれを繰り返し、最終的には「俺も食べようかなー」とするとイヤイヤして口を開けるほどになった

「何度やってもダメだったのに・・・・・」と切なげな華に「お前は力み過ぎなんだよ 喰わせよう喰わせようってのがダイに伝わったんだな」と店長が笑ってそれを見ていたダイがニコリと笑った


その日をきっかけにダイは躊躇なくお菓子以外の食べ物を口に運び、好きじゃないものでも滅多に口から出したりせず我慢して食べるようになった

何より文章にはなっていないものの言葉を発するようになり、声を出して笑うようになった

なってしまうとそこからは早くてどんどんダイが明るくなる

タイミング悪く約束の1週間で、華はすっかりダイに情が沸いてしまっていた

闇の話 「ジャンプの果て」

寮に戻るとポコちゃんはやっぱりテレビの前の座イスでタバコを吸いながらテレビを観ていた。

「おかえりー」声を出さず口の動きだけでそう言ってヒラヒラと手を振って見せる、これはポコちゃんが酔っている時のパターン

「ポコちゃん」
テレビとポコちゃんの間に入り真面目な話を切り出す空気を醸し出すと、ポコちゃんは身体をスーっと傾けて華越しにテレビを観る
「ポコちゃん!店長がお店に連絡して来いって言ってたよ」
リモコンを奪い取りテレビを消してそう言うと、ポコちゃんがゆっくり睨むような視線だけ華に戻した

「ここにいるって言った訳?」
「言ってないよ」

華の答えにホッとした顔をして元のゴキゲンなポコちゃんの顔に戻り、こんな事を言った

「ねぇ、華、もしクーが目の前に居たら どうする?」
「どうするって・・・・・・謝ってもらう・・・・・・かなぁ」
華の真面目な答えにポコちゃんはニコニコしながらこう返す

「私は殺すね」
「え?」
「ねぇ、2人でクーを探し出そうよ!それでさ、アイツを殺してやろうよ!そうしよ!そうしよ!」
「いやいやいや、ちょっとポコちゃん・・・・・」
ポコちゃんのおかしなテンションに戸惑っていると、今度はしょんぼりした顔をして

「そうだよね・・・・・クーにはヤクザの彼氏が着いてるんだもんね・・・・・殺すどころか殺されちゃうよね」
「ねぇ、ポコちゃん・・・・・とりあえずさ・・・・・」
どんどん声が大きく話が物騒になるポコちゃんをなだめようとすると、スッと立ち上がりベランダの窓を開けた

「華、一緒に死のうよ もう無理だよ」
「何言ってんのポコちゃん!危ないよ!」

そこからポコちゃんはもう叫びというより奇声という感じで、クーを殺したい、ダメなら自分が死にたいと繰り返しベランダの縁を跨いだ

華の部屋は2階で落ちた所で死ぬ高さじゃないけど、華は必死にポコちゃんの身体を抱えるようにして夢中でポコちゃんの名前を呼び続けた

寮からも施設からも職員がすぐに出てきて「何をしてるの!降りなさい!」という声がして、その声が余計にポコちゃんを刺激してポコちゃんが叫ぶ

「あいつさえいなければ、あいつにさえ出会わなければ、私はこんなじゃなかった!!!!!!」

どのくらいそれが続いただろう。

気が付いたら、華とポコちゃんは1回のベランダに抱き合うようにして落ちていた

ポコちゃんの顔は色んな水分でベチャベチャで、失禁していた

華の部屋の真下に人は住んでいなかったけれど、斜め下の部屋の人が機転を利かせて1回のベランダに布団を投げてくれたから
そこにキレイに落ちた二人はとりあえず大きな怪我もなく意識もちゃんとしていた


一応、と病院に運ばれたポコちゃんを親が迎えに来て、連れて帰った。
後で聞いた話では紹介された風俗店で妊娠したり、性病をうつされたり、大変だったらしい。

結局ポコちゃんの膨らみに膨らんだ借金は、親が畑を売って払ったと言う噂だ。


一方、華は施設をクビになった。
寮の規則をやぶった事も理由の1つだったけれど、落ちた時にポコちゃんの身体の下に華の手が入ってしまい肩から下が全く動かなくなってしまったからというのが大きな理由だった。

華は店長の知り合いの不動産屋さんに格安でアパートを借り、唯一片手でもいいよと言ってくれた新聞屋さんの集金のバイトを続けた。

ここまで来ても親に泣きつかない華を店長は「バカだな」と苦笑いしていた。

ギブスで腕を固めて1ヶ月、すっかり腕は完治して華は新聞の集金のエリアをドンドン広げていった。
他の人が熱心に集金せず、溜まりに溜まってしまった家や、地区をどんどんもらって怒鳴られようが嫌味を言われようが居留守を使われようが通い続け集金をした。

そのお店は1件集金して幾ら、というお給料制度だったから根負けしてたくさん払ってくれる家があると華のお給料はドンと跳ね上がる。回収すればお店も助かる。

(後に滞り続けていたエリアもすっかり回収を済ませ、華はお店の集金王になった(笑))

そのお店の事務仕事を一手に引き受けていた奥さんは小さな子供を4人抱えた肝っ玉かあちゃんで、こわかったけど華をとても可愛がってくれた

店長(旦那さん)は早朝の仕事を済ませると毎日のように閉店までパチンコだったし、奥さんは免許を持っていなかったから「飯行くよー」とほとんど毎日華を誘い、華の小さな車に子供達を押し込んだ

子供達は華になついていた事もあって色々な面で華を便利に思っていたのももちろんあるだろうけど、姉が出来たみたいで華も嬉しかった。(毎日ご飯ご馳走になってたし)


そんな楽しい毎日は長くは続かない。

ある日の母からの電話が新しい嵐の訪れを告げる


「華?今、クーちゃんが来てね 子供を置いていったんだけど・・・・・クーちゃんから聞いてるよね?」

闇の話 「ポコちゃん」

「華、悪いけどしばらくここに置いて」

そう言ってポコちゃんが訪ねて来たのは夏のとても暑い夜だった。

「え?ど、どうしたの?」

華の住んでいた寮は施設の敷地内にあったから基本的に部屋に人を入れるのはNGだったので、色んな意味で戸惑ってとりあえずポコちゃんを部屋に上げた。
大きなバックを持ったまま部屋を見回して「意外と広いんだねー」なんて言いながらドカリと座り込む

「あのさ、ポコちゃん・・・・ここ、人を入れるのダメだからさ・・・・・」
帰って欲しい、という意味で言ったのにポコちゃんは「あ」という顔をしてから口の前で人差し指を立てて見せた

静かにって意味じゃないんだけど・・・・・

「少しの間で良いの、昼間も出歩いたりしないし、ずっと部屋でジッとしてるから ね!お願い!」
「・・・・・なにかあったわけ?」
華の言葉にポコちゃんはギュッと唇を締めた
「ちゃんと返済してるの?」
これにもだんまり
「店長からずっとジャンプしかしてないって聞いてるけど・・・・・・」
「へ!い!き!」

結局、華はポコちゃんに押し切られる形でポコちゃんを部屋に置いた。

ポコちゃんは最初に言った通り、一日中部屋から出ようとしなかった。
夜に買い物へ行く時だけ一緒に着いてきてタバコとお菓子とお酒を買っていたけど、それ以外は一日中座イスに座って音を小さくしたテレビを観ているか寝ていた。
話しかけても普通の話なら楽しげにするのに、借金や仕事の話になるとダンマリを決め込む
そんなポコちゃんが段々心配になってきていた

「おーい、華」
返済を済ませて事務所を出ると、店長が車の中から手招きをしていた。
「どうだ?親には話したか?」
「・・・・・・・」
「親、いるんだろ?」
「はい」

夕方の街を車で走りながらポツリポツリ、親に相談したくないという事を話す。
話しながら自分自身が別に怒られるのがコワくて言えないんじゃないと言う事に気がつく

単純に親に失望されたくない。

店長はそれはまだ二十歳ソコソコの子供が闇金で多額の借金を抱えていていい理由にはならないと何度も華に言ったけれど、それでも華は頑なに「話せない」と答え続けた。

困り果てた華に店長が提案をする「華の年齢じゃ銀行からも借りられないしな・・・・・大きく楽にはならないだろうけどうちより金利が高くない所で借り換えるのはどうだ?」

「借金するんですか!?」

他で借りる、という言葉に過剰反応した華に店長が「おいおい、聞け聞け」と自分の所がいかに高い金利でお金を貸しているかを説明し、普通の、と言うと変だけど消費者金融ならば自分の所ほどデタラメな金利じゃないと丁寧に説明してくれる。

「考えておきます」

言いたい事は理解出来たけど、借金をするのはコワい。
そんな表情を隠そうともせず元の場所に戻った車から降りようとすると、店長が思い出したように「あ、そうだ」と切り出す
「華の友達の、ほら、ジャンプばっかりしてた子いたな」
「ポコちゃんですか?」
「あの子から連絡あったらウチに連絡しろって言ってくれ」

連絡があったらもなかったらも寮に居る。
そう言えないまま店長の車を見送り、ふーっと大きな溜息をついた。

闇の話 「ジャンプ」

「ジャンプ????」
そう首を傾げる華にポコちゃんはジャンプについて説明してくれた

ポコちゃんの口から出る言葉はとても魅力的に聞こえたけれど、要するに利息だけを払って元金の支払いを翌月に飛ばす。という何の解決にもならない話だった。

「でもさ?それじゃいつまで経っても借金は減らないよね?」
「そうだね^^」
そうだねって・・・・・人ごとながらこっちが心配になってくるようなポコちゃんの明るさには彼女なりの根拠があった。

「あのね、クーが見つかりそうなんだよ」

「え!」

「実はね、私、あのお店の人と付き合ってるんだけど、なんか結構ヤバい感じで探しまわってるらしいよ」

「そうなんだ」

「もし、クーが見つかったらクーに騙した事を認めさせて、借金をクーに払わせれば私も華もこんな生活からオサラバ出来るって事^^」

なるほどなような気もしたけど、そんなに上手く事が進むものかなぁ なんて思いながら、その日は別れた。


華はその後、一度だけジャンプをした事がある。
それまでバイトで貰ったお給料はそのまま、お給料袋のまま小銭まで返済していた華が「ジャンプで」と言った時、受付の人がちょっとだけ驚いた顔をしたのが印象的だった。
お店を出てもお財布にたくさんお金が入っている事が嬉しくて、華はそのまま服や化粧品や食べ物とお酒をたくさん買って寮に戻り、その日のバイトを休んだ

好きなだけ食べて、好きなだけ飲んで、フラフラしながら買ったばかりの服を着てメイクをして鏡の前に立った瞬間、鏡の中の自分が震えるほど怖く感じた。

変な話だけど、借金をして全てを揃えたような気分になって怖くて怖くてたまらなくなった

結局、大分減ってしまったけれど、翌日に残りのお金は返済に行った。

自分がヘタレで良かったと今も思っている

いつのことかはっきり覚えていないけれど、返済に行った時にそこの店長という人にお茶に誘われた事がある。
「好きな物を頼んで下さい」
そう言われたけれど、華の目にはメニューを器用に持つ店長の手が気になって仕方なかった。

確か、2本、指がなかった。

返済に行っても会話をする訳でもなく出入りの時に会釈をする程度の人が華をお茶に誘う理由が分からなかったけれど、見た目と笑顔のギャップが怖過ぎて断れなかったのが正直なところで
いつまでも決められない華に頼んでくれたチョコレートパフェを一生懸命口に運び続けた

「たまにこうして一緒にお茶してくれないかな?」

ギクリと顔を上げた華に店長は楽しそうに大声でわらった。

「怖くて断れなかったか」

「はい・・・・」素直過ぎる華に店長は更に楽しそうに笑う

「取って喰ったりしないから、たまにこうして話をしてくれればそれでいいから」

それから華は店長と何度かお茶をした。
お茶どころか目の前で大きなお肉を焼いてくれるステーキ屋さんや、回らないお寿司屋さん、普通のファミレス色々な所へ行ったけれど、店長は決まって昼間の返済の帰りに華を呼びとめる

「店長の愛人だって聞いたよ^^ やるぅ」ポコちゃんがそう言ったけど、誓ってそういう事はなく 少しづつ打ち解けていく華の話を楽しそうに笑って聞いてくれるだけだった

ステーキ屋さんを出た時に「自分の分は払います」と言ったらレシートを見せられ青くなる華に「子供は遠慮せずウマイウマイって喰えばいいんだ」と豪快に笑った姿や「ここは私が!」と鼻息を荒くファミレスのメニューを差し出した華に「よぉーし、高い順から全部持ってこい!って言うかな」という楽しい一面も正直カッコ良かった。


仕事終わりに返済へ行った時「腹減ってるか?」と声をかけられ初めて夜に食事をした。


「華」
「はい?」
名前を呼び捨てにされる事もすっかり慣れていた

「なるべく早くこの事を親に相談して完済してもらえ」
「え?」
「子供がいつまでも抱えてる問題じゃないし、子供に解決出来る問題じゃない。」
「けど、頑張って減らせてます」
「それは華が本来楽しむべき若さをすり減らしてるだけのことだ、寝る時間を減らして、欲しいものも買わないで

華は今、何が楽しくて生きてるんだ?」

グサリと胸に刺さった。

「この借金は騙されて出来た借金だから例外と言えば例外だけど、普通、こんな店で金を借りる人間は感覚がおかしくなってる。
友達だってそうだろ?自分の借金じゃないと開き直った分、もっと性質が悪い。」

「ポコちゃんですか?」
「うちの人間に仕事を紹介されて、そこそこ稼いでるはずなのに未だにジャンプしかしてない」
「そうなんですか・・・・」
「華はまだ戻れる。だから親に助けを求めろ。
助けてやりたいけど、店長クラスの俺に決められる事なんて限られてる。」
「・・・・・・」
「何か買え、何か喰え、と金を渡せば返済に回すだろうからこうやって誘っていたけど、それが良くないかもしれないと思い始めて来た。
とにかく少しでも早くウチの借金と離れて、年齢相応の生活をしろ」

華はその言葉をどこかで淋しく感じていた。

もちろん、借金は早く終えたい。
だけど、突き放されたような淋しさも感じていた。

施設の仕事に慣れて、色々な事を1人で出来るようになってからというもの華は年配の職員にイジメを受けていた。
入所者の皆さんに可愛がられる存在になった華を気に入らなかったんだろうと華は高校時代の経験で分かっていたから苦にはしなかったけれど
大人になってもこういう事ってなくならないんだなと妙に悲しく感じたりもしていた

自分から親を遠ざけていた事もあって、自分の中で唯一の「楽しい大人」だった店長
もしかしたら異性として惹かれていたのかも知れない

だから華は「はい」と一応返事はしたけれど誰にもそれを相談する気はなかった。

おやすみなさい、また明日。

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闇の話 「折れる」

残金を聞いて華の心はボッキリ折れてしまった。

あの生活を2年近く続けて、それしか返済出来ていないなんて
同じ事を何年続ければ自分は借金から解放されるのかと愕然とした。


借金を抱えていない他の友達は、可愛らしかったりカッコ良かったりする車に乗ってオシャレな服を着て美味しいものを食べて楽しそうにしている

華は寮の電気もつけないで調理のおばちゃんがくれたおにぎりを口に放り込んでコソコソとバイトに出掛ける

同じく騙された友人のほとんどは親に借金を返済してもらって、その時はきっとかなり怒られただろうが今となっては何事もなかったように生活をしている

どうして私がこんな目に合わなければいけないんだ そう思った

何も関係ない友達や、きちんと親に相談した友人と自分を比べて僻み根性をむき出しにした

こんなに頑張ったのに

こんなにひもじい思いをしているのに

どうして自分ばかりこんなに辛い思いをしなくてはいけないんだろう


みすぼらしい自分の姿を見て、華はバカバカしいと思った。

自分だって楽しい事にお金を遣いたい。

だけどまた施設にコワイ人が来るのは絶対に嫌だ

様々な感情がどんどん関係のない人達への僻みに向かっていく


そんなある日、同じようにクーに騙されたけれど自力で借金を返している数少ない友達から「ゴハンに行こうよ」と連絡が来た。

傷を舐め合う事で少しは気が晴れるかと待ち合わせのお店へ行くと、友達は華よりずっと元気そうで楽しそうだった。

「クーにはほんと、参ったよねぇ」

参ったどころの話じゃないのに、あっけらかんと笑ってタバコに火をつける

その仕草が妙に大人っぽくて華はドキッとした。

「あとどの位かかるのかなぁ」

「どうだろうね~」

友達、ポコちゃんの言葉にはちっとも大変さを感じない。
背負っている感が全く感じられなくて華は拍子抜けしてしまう。

「毎月ちゃんと返済してる?」

そしてポコちゃんの明るさとは真逆に借金の事ばかり気にして暗い話題しか出さない華に、ポコちゃんはニンマリ笑ってこう言った

「ジャンプしてれば取り立ては来ないよ?華、知らないの?」

ポコちゃんがそう言いながら吐き出したタバコの煙は魔法のツボから出るソレみたいにボワンと天井へ向かって浮いていった。

闇の話 「がむしゃら」

数日後、華は同じくクーに騙された友人とクーの実家を訪ねた。

「あああ、あなた達も・・・・」

前は遊びに行くたびにこれでもかと言うほどお菓子を出してくれて、そのお菓子を一緒に食べようとしてクーに「お母さん!あっちいってよ!」と言われて「ケチー」と笑っていたクーのお母さんは疲れ切った表情で華達を居間に通した

数年ぶりに会う事もそうだろうけど、以前のハツラツとした明るい感じではなく白髪のボサボサの髪を後ろで雑に束ね目はどことなくボンヤリとしていた

「申し訳ありませんでした。」

クーのお母さんから出た言葉は
「同じように家を訪ねて来た人が数名いて娘が人を騙してお金を持って逃げたと知った
娘がそんな所に勤めている事も全然知らなかったし、交際を反対しているなんて話は全くない
色々な手を尽くして娘を探し出して皆さんへの謝罪や返済をさせたいと思っている
本当ならば親である私達がみなさんの借金を肩代わりしてお返しするべきかもしれないけれど、騙されたと訪ねてくる人の誰一人として契約書の控えすら持っていない状態である以上、最後の最後まで娘を信じたい」というもので
要するに皆さん頑張ってお金を返して下さいということだった

当時の華はどこかに相談しようとか親に相談しようとかそんな事は一切考えておらず、ただひたすらに「親に知られる前にがむしゃらに働いて返そう」と思っていたから
それをクーの親にどうこうしてもらえるなんて考えてもいなかった

華にとって一番恐れていた事は親に知られること

自分がバカな事をしたと思い知っていたからこそ、1日でも早くこの事実を消してしまいたいと思っていた

その日から華は生活を切り詰め、夜勤明けの日や休みの日、遅番の出勤前など空いている時間を色々なアルバイトをしてとにかくお金を稼ぐ事ばかり考えていた

農家の収穫の手伝い、ラブホテルの受付、新聞の集金、ガスの検針、アイスクリーム工場、色々な事をした。
そして入ってきたお金を月に何度もせっせせっせとサラ金屋さんへ返済に行った。

騙された友人のほとんどが親に泣きついて事が解決していたから「探偵に見つけてもらってヤキいれてやる!」なんて話で盛り上がっていたけど、華にしてみればクーが見つかろうが見つからなかろうが、そんな事はどうでも良かった

華は、人を騙すために涙を流す事が出来る人なんて世の中にはそうそういなくて、ある種の訓練をされたプロだけが出来る事なんだと思っていた
言葉巧みに嘘をついて、お金を騙し取るなんてことはそれこそ泥棒中の泥棒しか出来ないと思っていた

だけど、実際そんな人は普通にその辺に居る
それを身を持って思い知った

そしてそれを見抜けずコロリと騙された方も悪いんだ

そんな風に変に冷めて、華はとにかく必死に数字を減らす・借金を抱えている事実を消す事ばかり考えていた。

そのうちお金を出して食べ物を買う事さえ勿体ない気がして、みるみる痩せ細っていったから施設やバイト先で誰かがくれる食べ物だけを食べて生活するようになる
まるで物乞いみたいで、とにかくお金に対してギラギラしていたように思う

クーの実家に行ってから、月に一度、クーの母親から手紙が届いた
「華ちゃんへ ごめんなさいね」
文面はいつも同じでティッシュにくるんだ5000円や1万円、時には段ボールに硬貨を張り付けて(普通郵便だからお金と分からないように)6400円なんてお金が同封されていた。
クーの母親が皆にそうしていたか、華だけにしていたかは知らないけれど華はそれを申し訳なくも有り難く返済にあてていた

何回目の手紙かは忘れてしまったけれど、封筒に中に10万円入っていた事があった。
驚いて手紙を開くと、そこにはガタガタと震えたような文字で「ごめんね」とだけ書かれていて華は変な胸騒ぎがした。

数日後、友人から「クーのお母さんが自殺したらしい」と聞いた

思い悩んで精神的に疲れ果て、自分で運転してコンクリートの壁に衝突したらしい

何度も、何度も、死ぬまで何度も

「密葬らしいけど、もしかしたらクーが来るかもしれないから皆で見張って捕まえようよ」

友人はそう鼻息を荒くしていたけれど、華はとてもじゃないけどそんな気分にはなれなかった。


何人もの友達を騙し、悪いなんてこれっぽっちも思ってない華に頭を下げお金を騙し取って逃げたクーは自分の行動がまさか母親を自殺に追い込むなんて考えたりしなかっただろう

震える手で「ごめんね」とだけ書いた母親の気持ち

精神的に病んでいたとは言え、死ぬまで何度も車で壁に衝突するなんて

どんな気持ちでこの世を去ったんだろう

それを思うとやりきれない気持ちになった


借金が発覚してから2年しないうちに、華は400万円を返済した。
バカな華は「利息」なんて考えもしなかったから、これで全てが終わったんだと思った。

でも、実はほとんどが利息で、実際はまだ3分の1も返せていないと知った時

自分の中の張りつめていた何かがプツンと切れたのを感じた

闇の話 「自分の甘さ・馬鹿さ加減」

高校を卒業した華は、とある市が持つ重度身障者養護施設で介護の勉強をしながら仕事をしていた。

実は卒業間近までごく普通の会社の事務員として就職すると言っていたから、本当の就職先を知った両親は猛反対をした。
今ほど介護という仕事がひらけていなかったから「とても大切な仕事だとは思うけれど、娘がするのは賛成出来ない。」という気持は分からなくなかった。

実家からそう遠くない場所なのに「時間が不規則だから」ともっともな理由をつけて華は寮生活を始める。
数日で母親の苦労が身に染みて分かった(笑)
それより何より例え口やかましいお小言であっても家の中で自分の声しかしないというのは本当に淋しく感じた。
自分で作らなければいつまでたっても食事は出てこないし、洗って干してたたまなければ洗濯物は増える一方。
だけど反対を押し切って飛び出した以上、のこのこ戻る事は出来なかったし、両親が恥ずかしくなるような生活だけはしたくなかった。

慌ただしく見るもの全てが新しい中、それなりにリズムを掴め始めたのは4~5ヵ月が過ぎた頃

この仕事が自分の天職かも知れないと思い始めた矢先、母から一本の留守電が入っていた。

「クーちゃんから何回も連絡があって『どうしても連絡を取りたい』と言っていたから、そっちの電話を教えたよ」

母は悪気なく自宅に何度も遊びに来て良く知っていたクーだからとしたこと。

だけど華にとってそれはとんでもなく嫌な予感がする事だった

この辺の詳細ははしょるけれど、寮と言っても自室の固定電話だったから電話を無視し続けた華にしびれを切らしたクーが再び母に泣きつき
最終的には「あんなに仲良しだった友達が悩んでるっていうのに、無視をしたら可哀想よ」と勝手にお膳立てをされ華はクーに会う事になる。


「久しぶり^^ 元気にしてた?」
悩んでいると聞いていたクーはまるで全てを忘れ去ってしまったように元気でニコニコとしていた
「うん、用事ってなに?」
平日の夜だからきっとお互いに仕事終わりだと思うけれど、爪を伸ばす事やアクセサリーを着ける事がダメな職場で化粧っ気もなくヘトヘトの華の目の前のクーはジャラジャラとアクセサリーを着けてキチンとと言うよりやり過ぎ感すらあるメイクで服も派手になっていた。

「うん、華を親友と見込んで大事な相談があるの」

「は?」

多分、華は結構な間抜け声でそう言ったと思う

「あのさ・・・・・

そんな事はお構いなしで話を続けようとするクーの目の前で華の血管は破裂して血が沸騰しそうな勢いだった

「なにそれ?親友と見込んで??????自分が私に何をしたか忘れたわけ?」

立ち上がった華を見上げるようにしていたクーが静かに立ち上がりテーブルに頭をぶつけるんじゃないかって程、深く頭を下げた

「あの時はごめん、忘れる訳なんかないよ ほんとごめん。 何度謝っても許してもらえないかも知れないけど、何度でも謝りたい」

意外過ぎたクーの行動に拍子抜けしてしまった華はペタンとシートに身体を沈めた

「許してもらえないかもしれないけど、許してもらえるまで謝りたい。
私ね、今、すごく悩んでる事があって、華にしか相談出来ないから・・・・・あの時はほんとごめん。」


今まで自分の事を何度もバカだと思ってきたけど、あの時の自分は人生のベスト5にランクインする馬鹿さ加減と思う
許せない、大嫌いだと思ってきていたクーなのに、二度と会いたくないと思っていたクーなのに、あの時の華はそんなクーを許そうとしていた

もちろん、学生の頃と違い毎日顔を合わせる訳じゃないし、許した所で二度と会わないかも知れない。
自分が嫌な思い出としてモヤモヤしていたソレを、もしかしたらクーも感じていてくれたのかも知れないという
何とも甘ちゃんな気持が華を油断させた。

「もういいよ、分かった」

その言葉に顔を上げたクーはそれから足早に卒業後の自分の歩みを話し出す。
大手電機メーカーの製造に就職したと思っていたクーは、とっくにそこを辞めて別の仕事をしていた

「今は大手じゃないけど金融業^^ 前よりずっと仕事は楽だし、お給料も良いんだよ^^」
「そう、よかったね」
「あ、そうだ!彼氏も出来たんだ!」
「そっか」
そしてそこから急に表情を曇らせ「でもね」と続ける

ここからは大雑把に説明すると、

同じ会社の人とお付き合いをしているけれど親が交際を反対している。
実は自分は妊娠出来ない身体なのだけど、彼との子供を現在妊娠してる。
親がおろせと無理矢理病院へ連れていこうとしているから彼と逃げる事にした。

「彼との愛の結晶を殺したくないの・・・・・・」
ファミレスで人目も気にせず号泣しているクー

華はその、どうにもこうにも胡散臭い話を馬鹿正直に信じてしまっていた。

クーはたたみかけるように
「子供が生まれて落ち着いたらきっと親も許してくれると思うけど、それまで逃げるにはまとまったお金がいる
幸い、勤めている会社がお金を貸してくれると言っているけど保証人がいると言われた
あくまで借りるのも返すのも私達だから、華には絶対に迷惑をかけない
だからお願い、保証人になって」と一気にテーブルに書類を広げた

「保証人って・・・・・でも・・・・・・」
バカなりに一応難色を示し、それよりも親に認めてもらう方法を一緒に考えようと話の方向を変えようとする華にクーは「お願いします!親友の華にしかこんな事頼めないの!」と大袈裟な声でまた頭を下げた


もうお分かりの通り、翌月華は職場にやって来たイカツイ人に、まだ18歳の自分が400万円もの借金を抱えている事を知らされる。しかも保証人ではなく、借りた本人。

クーの勤めていた金融業と言うのはブラックな高利貸しで、クーはそこの従業員の手引きで数名の友人から同じ手口で借金をさせ姿をくらましてしまった。

向き合う意味

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闇の話 「絶対的な後悔」

「華先輩・・・・ちょっと話せますか?」

華にそう持ちかけて来たのは、もうとっくに引退した吹奏楽部の1個下の新しい部長と副部長だった。

神妙な表情の2人は華の「聞く姿勢」を見て安心したように話し出した

簡単に書くとこんな感じ

もうとっくに引退したクーとその一派が部室の鍵をいつまでも返してくれず(華はとっくに返した)入り浸って困っている
そして最近、部室の色々な物がなくなる と言うのだ

そもそも部室に置きっぱなしにしておく方が悪いと言えば悪いのだけど、財布やマンガ本やCDなどなどが毎日のようになくなるという

「それは顧問に相談した方が良いよ」

今更クーに関わりたくない気持ちもあって、もっともな意見を言ってみる

「相談したんですが・・・・・犯人探しは良くないとか・・・・置いておくのが悪いって言われるだけで・・・・・無くなった物は仕方ないと思っているんですが、クー先輩に鍵を返して欲しくて・・・・・」

「悪いけど、力になれないよ 何度言ってもダメなら顧問に言ってもらうしかないんじゃない?」

冷たいなぁと後輩は思っただろう。


そして数日後、華は置きっぱなしにしている物を少しづつ整理しようと思って教室の自分のロッカーを開けて愕然とした。
ロッカーの中の手提げ袋に見た事もない財布や化粧ポーチがいくつも入っていたのだ

やられた そう思った

捨てるわけにもいかず、中身はもちろん抜かれて切り刻まれた財布や化粧ポーチなどを持って部室を訪ねた

「華先輩はもう鍵を持っていないって分かってますから」
後輩達はそう言ってくれたけれど、華のロッカーにそれがあって中身が抜き取られていて、見るも無残な形になってしまっている事は事実だ
「私が盗ったんじゃないよ」と言うのはきっと後輩たちにとってどうでもいい言葉だろう
疑う人は疑うし、疑わない人は疑わない。

でもそれを返さず捨ててしまうのは、可哀想な気がした。

その足で華は顧問を訪ね、経緯を説明し対策を取って欲しいと頼んだけれど、やはり顧問の答えは後輩達に出したそれと同じだった

「犯人探しは意味がないし、鍵を次の世代に渡すのは生徒達の伝統だから顧問が口出す事じゃない」

兼任のコーラス部の方に熱心で部活にほとんど顔も出さないような顧問だったから「面倒はイヤだ」という事だろう

八方塞がりだなぁと思って職員室を出ると、後輩の1人がコソコソと隠れるように華を待っていた

「ダメだった、力になれなくてごめん」
後輩はブンブンと大きく首を横に振って「華先輩にお願いする私達が悪いんです」と続けた

「私達はクー先輩が華先輩の事を悪く言うのを笑って聞いていました。
心の中では皆が『村田先輩にふられた腹いせだ』と分かっているのに、そうだそうだ!と言わないと自分が仲間外れにされるから・・・・・
それなのにこんな時だけ先輩に頼ってる私達がダメなんです・・・・・」

今にも泣きそうな顔をしている目の前に居る後輩は、ズタズタに切られた財布の持ち主の子だ
彼氏が一生懸命バイトをして高校生にしては高価だったブランドのお財布を誕生日にもらったと嬉しそうに見せていた時、クーが物凄く不機嫌な顔をしていて「生意気」と言ってたのを華は知っていた。

合わせていないと自分がイヤな思いをするから、というのは何も後輩達だけが抱いてた感情じゃない。

あの事があってから部活動もいい加減になってしまったから、1つくらい後輩の為になりたい。
そんな気持ちで華が部室に戻ってみると、クーとその一派がUNOをやっていた

「あのさ、もう引退したんだから鍵を返してあげなよ」

「二度と話さないんじゃなかったんだ?」
その言い方がほんの少し怖くて、後輩の前で必死に怖くないフリを続ける

「自分達だってそうやって先輩から鍵を受け継いできたんじゃん 可哀想だよ」

「違うよ?」

クーは楽しそうにUNOをしたまま華の言葉を遮る

「鍵を取り上げてる訳じゃないし、入り浸ってる訳じゃないよ
なんか部室で物が無くなるらしいから犯人を捕まえる為に見張っててあげてるんだよ」

まるっきり話を聞く気がない素振りにイライラするのと、ビシっと解決出来ない情けなさで何も言えない

「あ、そう言えばさ~、イトウちゃん、お財布戻ってきたんだって?切り刻まれてたらしいじゃーん ひどいよねー」

華の後ろをついてきていた後輩はその言葉にハッとして下を向く

「それって誰が持ってきてくれたの~?」

「・・・・・・」

「イトウちゃん!誰が持ってきたのか、皆が誰を犯人だと思ってるのかハッキリ言ってみ!」

クーの金切り声に後輩は下を向いたまま消えそうな声で「華先輩です」と答えた。

「もしかしてまた何か盗りに来たの?」

顔がカッと熱くなる気がして後輩を置き去りに部室を飛び出す
色々な気持を冷ましたくて校舎内をあてもなくブラブラ歩いていたら、とんでもない事を思い付いてしまった


華が今も絶対的に後悔している自分の行動


小柳先生という先生は若くて熱血漢でカッコ良かったから男子からも女子からもとても人気のある先生だった。
生徒会の顧問でもあり、楽しい時は楽しく、怒る時はビシッと怒る、華も良く知っていた。

ブラブラ歩いていたら小柳先生の声が聞こえて、顔を上げると書道部の練習部屋

華はそこに普通に入っていき「小柳せんせー」と先生に声をかけ、先生の視線がこっちを見ているのを完全に確認して

生徒のカバンを1つ持ってダッシュで逃げた


もちろん、中身なんか一切見なかったし、練習部屋を出てすぐの角で先生を待っていた。

生徒指導室で華は小柳先生に何を聞かれても「盗った理由は言いたくない、退学にしてもらって構わない。だけど吹奏楽部の盗難被害をきちんと取り上げて解決して欲しい」としか答えなかった。

今思えば、というか事が済んだ瞬間から最低な事をしたと思った。
こっちの事情はどうあれ、例え一瞬でもカバンを盗られた子は物凄くイヤな気持だったと思う。

だけどその時は本当にバカみたいだけどそれが全ての解決に繋がると思って、正義感すら持って華は犯罪を働いた。

「とりあえず親に連絡をする」
小柳先生がそう言って立ち上がった時、指導室に吹奏楽部の後輩と、その時は分からなかったけど華が盗ったバックの持ち主の子が傾れ込むように入ってきて、後輩達はワーワー泣きながら色々な事をいっぺんに喋り出した

「おいおい、ちょっと落ち着け」
先生が慌てて1人1人の話を聞くと、皆、自分達の部活で起こっている盗難被害と鍵問題を華に押し付けた事と、ついさっきの出来事を大泣きしながら説明し出した
そしてカバンの持ち主は偶然にも後輩の友達で、その話を前から聞いていた事と自分は被害に合っていないということ
そして小柳先生に吹奏楽部の問題の力になってあげて欲しいと言ってくれた

「華先輩を退学にしないでください!」

号泣する後輩達の前で華は感情をポツンと取り残されたみたいになっていた
出来過ぎた学園ドラマでもみているような感じで、どうしていいか分からずにいたけれど身体が勝手にカバンの持ち主の前に歩いていき、生まれて初めての土下座をしていた

「イヤな思いをさせてしまって、本当にごめんなさい」


そしてその後、吹奏楽部の部室の鍵は換えられ、引退した者は誰ひとり部室に入れなくなった。
結局誰が盗ったかという事は分からずじまいだったけれど、その後、物が無くなる事は一切なくなったと聞いて華はホッとした。

華の処分はと言うと、溜まりに溜まった生徒会室の資料の整理をすること
そしてそれが全て終わった日、小柳先生にこう言われた

「お前のした事は理由はどうあれ、悪い事だ。
どんなに正しい主張を持っていても、自分の下の者を守りたいと思っての行動でも、悪い事だ。
9正しくても最後の1が悪い事ならば、それは10悪い事と同じになってしまう事もある。
だから二度とあの日の選択はするな。分かったな?」



卒業式の日、今日で最後と言う気持ちも薄く、まるで春休み明けもここに通うかのように友達とワイワイ校門を出る時
後輩達が一列に並んで「ありがとうございました!」と言ってくれた
決して真面目でなかった華に対しての後輩の行動が友達には面白かったらしく「不真面目部員がお礼を言われてるー!」と大爆笑していたから、うっかりもらい泣きしそうになった華の事は気がつかなかっただろう。


こうして華のクーに振り回された3年間は終わった

だけどこれはまだまだ始まりに過ぎなかった事、そしてそんなのは闇のうちに入らないって事をその時の華は知らなかった。

闇の話 「きっかけ」

華がそれを知るきっかけは実にシンプルな事だった。

華と同じ中学から来ている唯一の子とクーが知らない間に仲良くなってしていて交換日記をしていた
その子がものぐさして別の友達にクーに日記を渡すように頼んだのだけど、きっと別の友人もものぐさなのか良く聞いていなかったのか華にそれを渡してきたのだ

「これ、みどりちゃんから」

そう言われて渡されたノートを何気なく開くと1ページ目は交換日記のお約束的な事が書いてある

①1回は必ず華の悪口を書く事

②華の不幸を祈る事を忘れない事

良く覚えていないけれどそんな感じの事がズラーっと書かれていて、内容は実にそれに忠実なものだった。

「レイプされれば良かったのにね」

「頭が割れて死ねばよかったのにね」


日記のルールに対しては実に忠実だった同じ中学の子は友情に対してはそうでもなかったらしく、日記を返却しようとしたら聞いてもいないのに色々な事をペラペラとしゃべり出した

「全部クーちゃんがやろうって言った事だよ!私は断れなかっただけだよ!
村田先輩に色目使って気に入らないから襲わせるって事も、下駄箱のラブレターを華より先に取って破って本人に返しに行って「あの子はヤリマンだから止めた方が良い」って噂を流したのも全部クーちゃんがやろうって言ったんだよ!信じて!華!ごめんね!本当に友達でいたいのは華だからね!」

信じても本当はも何も元々友達じゃないから、別にどうでも良かったけれど1つだけ気になった

「ていうか、みどりちゃんに嫌われる覚えがないんだけど・・・・・」

その答えは実に青春チックで実にバカバカしいものだった

「片思いしてたクラスメートに華ちゃんを紹介してって言われてショックだった」

知らんがな!

「私達、友達でいわれるよね?」
みどりちゃんの媚びるような笑顔は今も忘れられない

「は?元々友達じゃないよね?」



と、ここで少し補足をすると、華は決して可愛くはなかったと思う。
でも、人生で3度あると言われているモテ期を1度で消化したのか何だか高校時代は妙にモテた。
学校行事やバンドで何かと目についたという理由と性格の明るさと・・・・・胸だと思う。



2人の交換日記には華の文句が多かったけれど、胸の事と人懐っこさがムカツクというのは本当に良く書かれていた。
でも考えてみて欲しい。
太っていてもブサイクでも明るく人懐っこければモテる可能性があるってこと
少なくとも友達ヅラして聞き出した事をボロクソに書いてストレスを発散するよりはずっと視界が明るいはずだ

そう思っていたから不思議とショックはなかった。
むしろこれでクーの束縛から離れられるとホッとしていた。

「クー、これ、みどりちゃんからだって 間違って私に届いたよ」
差し出したノートを見てクーの表情がみるみる変わり、奪うとるようにされたけど華はノートの端を離さなかったからグイと引っ張り合う形になった

「・・・・・もしかして、中を見た?」
「心当たりがなかったから何だろうって思って少しね」
「・・・・・・・・・・あのね、華、違うんだよ!」
「何が?」
「みどりちゃんがやろうって言い出したの!みどりちゃんがね・・・・・」
「みどりちゃんも同じこと言ってたね^^ みどりちゃんはもっと色んな事も話してくれたよ?クーが色んな事をしてくれたことも」
「私じゃないって言ってんじゃん!」
思い切りノートを引いてきたタイミングで手を離したらクーが後ろに転がって丸椅子から転げ落ちる

「別にもうどうでもいいからさ、何をしても何を言っても構わないから」
「華・・・・・私たち・・・・親友だ・・・・・
「2度と私に話しかけてこないでね^^」


部室のドアを閉めた瞬間、華は妙に清々しい気持ちになっていた
これでトイレも自由に行けるし、電話も手紙を強要されずに済む。その気持ちが裏切られたショックより勝ったんだと思う

それにノートに文字にしなかっただけで、華だってクーに対して面倒くさいなという感情を常に持っていたからお互い様だなという気持ちもあった

しばらくは2人が華の周りをチョロチョロして「謝りたい」とか「許して欲しい」なんて言っていたけど無視をしたら遠慮なく文句を言えるようになったようで、知らない間に出来上がっていた「クーの友達チーム」にネチネチとイヤがらせを受けた

ただ、そのチームは揃いも揃って陰湿な僻みを抱えているんだなと分かっていたから別に何とも思わなかったし
クーという壁がなくなって華と友達になりたいと言う人もたくさんいてくれた

華は相変わらず明るくゲラゲラ笑って毎日を楽しくしていたけれど、人に自分の中身を見せる事だけは一切しなくなった
それと突然1人になりたくなってフラフラと学校をサボッて近くの川で1日中ボーっとしていたり本を読んだりしていた
やがて学校で過ごす時間は「バンドの練習までの時間潰し」みたいになってほとんど授業にも出なかった。


2年間も生徒会をやっていたから卒業出来ないと言う事はないとタカをくくっていたし、実際卒業も出来たw


その頃、マリは学校へ来ても教室へ行かない華を追いかけ回して怒っていた

「華ちゃん!卒業出来なくなるよ!いいの!先生怒ってたよ!」
「大丈夫だよ~」

今となっては面影もない超真面目っ子だったマリはまるで母親みたいだったw

「一緒に卒業しようよ!」
「大丈夫だよ~、多分出来るよ」
「全く!なんでそんなにいいかげんなわけ!」

渡り廊下で後ろから追いかけてくるマリとのこの日の会話は物凄く鮮明に覚えている

「華ちゃん!私は華ちゃんと一緒に卒業したいよ!」

華はマリのしつこさに若干のウンザリ感もあり、卒業後の行動もまるきり別な華にマリがどうしてこだわるのかサッパリ分からなかった

「なんで?卒業したら別々じゃん?」

「だって華ちゃんとは親友でいたいもん!」

後になって聞いた話ではマリは華とクーの事をクーから聞いていた
華の事をボロクソに言われ、人の彼氏に手を出すヤリマン女だと言われ、マリはそのバカバカしさに笑ってしまったんだそうだ

でも、親友というキーワードは知らなかったらしく、もちろん、その言葉が華に嫌悪感しか抱かせない事も知らなかった

「マリちゃんは親友じゃないよ」

特別な意味はなくただの拒絶反応でそう返した時のマリの悲しそうな顔は今でもよく覚えている
あ、と言った事を後悔した数秒後、マリは顔を上げてニッコリと笑ってこう言った

「分かった じゃ、スーパー友達!」

大真面目な笑顔に華は大爆笑して、それを見てマリも笑った

他の友達は華とマリの事を「ルパンと銭形みたいだ」と良く言っていたから、それをイメージしてもらうと当時の2人が分かりやすいかも知れない。


それから卒業間近までは相変わらずな日が続いたけれど、最後の最後にとんでもない事件が起きた

闇の話 「好きな人」

クーに親友になろうと言われてから、生活が激変した。

それらはこの年齢の頃にはよくある話なんだけど、したかろうがしたくなかろうが一緒にトイレに行き、毎時間交換手紙をしないといけなくて、家に帰れば電話で長々と話し、寝る前に長めの手紙を書く。
手紙の最初に「親愛なる」をつけないと怒るし、他の友達と話すと誰が見ても分かるような不機嫌な態度をとった

元々こういう「群れる感じ」が嫌いだったから何度となく「もう無理」とケンカ別れをしたけれど、その都度クーは昼間の激怒っぷりを一転させる号泣で「ごめんね、親友でいさせて」と夜に電話をかけて来て仲直りをするの繰り返し

クーは身長が大きくて体格も良く髪も短くしていた(華が言うのも何だけど大きなおでぶさん)けど、オシャレの話題やメイクなどにも敏感な子だった
一方華は背が小さくコロンとしていて、短くすると天パが強く出るという理由だけで髪を伸ばしているようなオシャレもメイクもあまり好きじゃない子だった(小さなおでぶさん)

クーは華のする事に常についてくるから後に始めたバンドも一緒だったし、生徒会も一緒、元々クラスも部活も一緒。
「いつ見ても一緒に居るな^^」なんて先輩達にも良く言われたけど、「親友だから^^」と答えるクーの横で華は少々ウンザリ気味だった。

華とクーの絶対的な差は性格だった

クーは人見知り気味で慣れると表情豊かに話すのに、そうじゃない人には不機嫌そうな顔で話したくないという雰囲気を醸し出す
一方、誰とでも平気で話ゲラゲラ笑い、先生に「華はトイレの100w(明る過ぎるという意味?)だな」と言われる華

だから華が知らない人と楽しげに話しているとクーが横に来て不機嫌な顔をするから、その人が気を使って離れていくと、友達が作りたい華にはそれがストレスでケンカという同じサイクルをグルグルと回っていた


ま、思春期に良くある人間関係な気がしてる


そんな中、バンドや生徒会で何かと目立っていた華に人生初のモテ期がやってきた。
呼び出されて告白されたり、ベタに下駄箱にラブレターが入っていたり、電車通学だったので駅で待ち伏せされたりと本人が戸惑うほどモテた。

でもその頃華はバンドも部活も面白くて仕方なかったし、バンドの練習などで何かとお金がかかったからバイトもしたかったし
父が「バイトは地元以外では禁止!門限は7時!」とありえない厳しさであることと田舎の電車の本数が少なかったこと
何よりクーの束縛でいっぱいいっぱいだったから全て丁重にお断りしているうちにピタリとそれも止んだ(笑)


「ねぇ、華には好きな人いないの?」
クーはほとんど毎日それを聞いてきた
当時本当にそういう人がいなかったから華は「いないよ」と答えたけど、クーはそれが面白くないみたいだった
「私達、親友でしょ?好きな人の話出来ないなんて変じゃない?」
「しないんじゃなくて、いないんだよ」
この会話もイヤと言うほど繰り返した

クーには中学からずっと好きだと言う人がいて、数え切れないほど告白をしては断られているのにその人を追って高校受験し、部活に入る。
吹奏楽部の1つ上の村田先輩。

実は華、この村田先輩がとっても苦手だった
だって何もしてないのに頭を叩いたり(軽くだけど)人のジュースを勝手に飲んだり、カバンを隠して探してる姿を笑いながら見てたりする意地の悪い所が苦手だったし

そうやって村田先輩が華を構うと必ずクーの機嫌が悪くなるのが本当に嫌だった

何より理不尽だったのは、クーの「協力して!」で村田先輩に何かを聞きに行ったりして、構われて、それを見たクーが怒るという流れ

「先輩って華の事好きなのかな?」
「いや、それはないでしょ」
「ううん、絶対好きだよ」
「ないない」
「本当は華も村田先輩を好きじゃんじゃない?」
「絶対ない!」
「本当?」
「本当」

というご機嫌取りを長々しなければいけないから



2年生になる少し前、引退した3年生の部長に部室に閉じ込められた事がある。
「お前が俺を好きだと聞いた 俺も好きだ」
そう言われて「そんな気持はない」と答えた事が部長のプライドを傷付けてしまったらしく、怒った部長は「キスをするまでここから出さない」と狭い部室内を逃げ回る華を力一杯壁に押し付けてキスをしてきた

用意周到にミントの味のする唇が思い切り押し付けられただけのキスだったけれど、華の最悪なファーストキスの思い出。

2年生になってしばらくして、村田先輩に告白をされた。
華はそれは絶対に受け入れられない事、そしてこれを絶対に外部に(クーに)知られたくない事を念押しした。

それなのに村田先輩は自分の引退の時に、しつこいクーへの当て付けで部員の前で華にもう一度告白をした。


3年生になる少し前、授業をサボッて部室で本を読んでいたら村田先輩と同じ1つ上の先輩が来て「お前、誰にでもヤラせるんだろ?」と言われ、襲われかけて
抵抗したら分厚いガラスに頭を叩きつけられ病院に運ばれた事がある。
幸い、襲われもしなかったし、傷も浅かったけれど、授業をサボった事がバレて散々怒られたイヤな思い出。

そして何故か華には「ヤリマン」という噂がつきまとった。
セックスはもちろん、あのキス以外のキスすらしてないのに廊下ですれ違いざま男子には「揉まれまくってデカくなった乳」と言われ、女子には「ブスだから身体使うしかないんだね~」と言われたりした


そして3年生になったある日、華は知る。

村田先輩の告白以外は全てクーが仕向けた事だという事を

闇の話 「親友」

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闇の話

ワキャキャな話が続いたので色んな意味でちょっと整理する話を。

今は聴力が戻った華だけど、その原因は不明
聴こえなくなったのも突発的なら、聞こえるようになったのも同じく突発的で残念ながら治療が功を奏してではないような気がしてる。

ここに書くことがたくさんあったから後回しにしてしまっていたけれど、華は一度、精神科へ治療へ行った。
やたらと光が差し込む清潔感溢れる診察室で「楽にして、不安な事があったら話してみようか」と物凄く温度差を感じる笑顔の医師が言った

華はそこが居心地悪く感じて、父の話を切り出した時も「あ~、なるほどね そういう人は~」という言い方が医師の経験してる患者サンプルに華を当て込めようとしているようで、ちょっと嫌な感じがした。

だからロクに深い話もしないまま何となく診察を終え、そそくさにその場を後にしようとしている華に医師がこう言った

「お父さんの事が引き金にはなったかも知れないけれど、元々抱えている物があるんじゃないかな?ゆっくりそこを掘り下げていきましょうね」

結局聴力が戻ってから治療へは行っていないけれど、華はその日から自分の元々ある『何か』を意識するようになっていた。


どうして自分の事をこんなに嫌いに思っているのか


太っているからとかブサイクだからとか言ってるけど(それもあるけど)本当の理由はそうじゃない。


ここから先に話す事の全てを知っている人はいない。
おおまかな部分を知っている人もこの世にマリしかいない。

あまりにもバカで無茶苦茶な話だから、下手な創作文章と思ってもらってもかまわない。

もう20年前のバカバカしい華の闇の話。

タイトルに常に「闇の話」とつけるのでイヤな人はスルーして下さいね^^

ナイショ話

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指輪作戦

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愛してやまない

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はじめまして

木蓮

Author:木蓮
木蓮と言います。
ちょっとだけお引越ししましてドキドキしております。

基本アホな事を書きますが時に「いやらしい事」を書く予定がありますのでご用心(≧∀≦)ご用心て…。

毎日の色々な想い・想い・重い(ボディ)をワキャキャと書いていけたらいいなぁなんて思っております。

初心者であまり仕組みを理解しておりませんが、リンクしていただけたりすると嬉ション漏らす勢いで喜びます(≧∀≦)嬉ション!

こんなお下劣な木蓮でございますが、どうぞよろしくお願いします。

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